中西 哲生 トークショー

〜 サッカー選手の日常は、一般人とどれほど異なっているのか? 〜



日   時 2000年1月21日 19:00
会   場 ロフト プラスワン (東京都新宿区)
観 客 数 ???人



中西選手および戸塚氏のコメントは、適当にメモったので
間違えが多々あるかも知れません (<_>);


サッカーもオフシーズン真っ盛り(?)。試合もなければ応援もないので、たまるのは鬱積ばかり。
そんな中朗報が、川崎フロンターレの精神的な柱の中西選手(背番号14:DF)が、トークショーを開催するようだ。
場所は新宿歌舞伎町。これなら仕事帰りでも何とか寄れそうだ。
タイムカードリーダの時刻が18:00になった瞬間、タイムカードを差し込み、一目散に新宿へ向かう。
頭の中は、中西選手で一色に染まる。もはや他のものは何も目に入らない。
新宿駅に到着後、コマ劇場の方へ小走りする。方角を間違えそうになるも、何とか劇場前に到着。
近くの交番に駆け込み、場所を確認。程なく会場の「ロフト プラスワン」にたどり着く。
エレベーターに飛び乗り、2階へ向かう。降りてみるとそこは会場ではない。
おかしいぞ?首をかしげながらエレベータの案内を見ると「地下2階」ではないか。
ああ、またしても情けない勘違い・・・。

コマ劇場

向かおうとした反対側が目的地だったとは
ここまで方向音痴だと何も弁解できない・・・


地下2階に到着すると、そこは薄暗い世界。一見するとクラブ風にも見えなくもない。
中に入ると、こじんまりとした会場は、すでに黒山の人で埋め尽くされている。空席を確認すると、別室でモニター越しでの鑑賞になるとか。
何だそれは!フロンターレは選手とサポーターの距離が短いのが最大の売り物。それなのにモニター観戦などとても許容できない。
散々粘った挙句、ステージ脇に空間があり、そこはOKとのこと。
ステージに続く階段の脇に腰掛け、ショーの開始を今かと待ちわびる。

舞台脇で鑑賞

到着が遅れたので、舞台の真横からの鑑賞となる
※シャッター無しでの撮影だったので、全体的に写真が暗いです


午後7時と同時にトークショーが開始される。
司会者の挨拶から始まり、先ずは共同著者のスポーツジャーナリストの戸塚啓氏が舞台に立つ。
引き続き中西選手が登場。その髪型は以前にもましてナチュラルに変貌している。
うーんケバイなあ。
お断り:ここでも撮影したのですが、筆者のデジタルカメラは暗所にやたら弱いので、画像はぶれまくり。
余りにも情けないので、掲載は見送ります(泣)。


冒頭、先ずは軽い話題から。「中西選手は歌舞伎町に似合いますねー」などと軽快なトーク。
そして印税の話題が、何でも分け前は中西選手を除く2名が山分けするとのこと。
中西選手(以下「中」):「僕はお金は要りません。」
それに応じ、戸塚氏(以下「戸」)も、「僕も要りません。」とおのろけて見せる。
その後は、中西選手のホームページの話題に。チーム側が選手達にページを作らないかと尋ねたところ、応じたのが中西選手だけだったとのこと。
試合のコーナー以外の更新頻度が今ひとつでありながら、ひと月のアクセス数が数万件にも達しているようです。
中:「すごくうれしいです。」

引き続き著書の話題に移る。
表紙の写真については「僕が選んだ:中」とのこと。1998年のJ1参入戦(博多の森競技場でのアビスパ福岡との戦い)で敗戦後、サポーターに謝って茫然とした姿です。
この写真を先頭に持っていけるのは、J1に昇格し、過去のことは払拭できたことと無縁ではないと思います。
他にも本中の写真は殆ど中西選手が選考に関与して、タイトルの「魂」も中西選手自身の希望からだそうです。
しばらくは博多の森談義。ここで3月にJ1参入戦を振り返るビデオが発売されることが明らかになる。
同時に開幕戦の日程が。何と博多の森でアビスパとの対決!!。
これは見逃せない、何があっても絶対行くつもりです(3月11日 15:00の予定)。

本を見ながらのトーク

本を見開きながら、トークは続く


そして話題は、1999年のシーズンへ。
開幕のベンチスタートについては「監督の判断でしょう:中」と振り返る。
中:「試合に出るつもりだったが、メンバー表を見て何で?と思った。」
著書の中にもありますが、開幕戦は負けて欲しいと心の中では思っていたとのこと。
中:「そうすればチャンスが巡ってくる。」

何故開幕は3連敗と言う不名誉なスタートだったのか。中西選手自身はトレーニング不足を理由に挙げていました。
中:「2月からはじめて3月開幕。これでは28日にしか期間がない。」
そうか、プロであってもコンディションを高めるのは、一朝一夕じゃないんですなぁ(当然)。
それと同時に、監督の采配に問題があったことを、正直に認めていました。

モニター越しのトーク内容

モニター越しの方が写真映りがよいので参考までに
現場では当然、舞台を直接見つめていました


それに関連し、松本監督(現球団社長)の話題が。
監督からいつも食事をご馳走になる話や、監督からのキャプテン就任要請の電話を、中西選手が監督のマネをして、会場は大笑い。
ゆがんだ顔からr繰り出される監督似の声が、大変面白かったです。

しばらくは長野の試合や、「魂の叫び」を戸塚氏が「タマサケ」と略して読んでいる話が続く。
すると、私の背後から突如女性の叫び声が。2階席の客が飲み物を床にこぼし、それが漏れて真下の観客を直撃したのが原因。
こんな会場ならではの、とんだハプニングでした。

バラック風の天井

バラック風の簡易なつくりのため、水がこぼれたらアウト


続いてJ2の試合について。中西選手が特に熱く語る。
中:「J2はエキサイトするリーグ。J1ほどのレベルじゃないが、気持ちが高く危機感を持ってプレーしている。」
全く同感。同時にベルマーレ・レッズが苦戦する予想を立ててましたが、これも同感です。
他のチームもJ1を目指して、必至にぶつかってくるはずです。
その例として、J1昇格が決定したサガン鳥栖戦を。相手の選手を最後まで称えていました。

そして、話題は再び博多の森へ。
中:「僕のバックパスのおかげで(敗戦し)、選手・スタッフ・その家族の人生まで狂わせてしまった。」
この一言で、会場は一転静まり返る。
でも、昇格したおかげで、「完全にふっきれた:中」とのこと。
中:「そして今になって振り返ると、あの時は全力でプレーしていた。」
その後に「でも全部ファウルだけども」の一言で、会場は笑いに包まれる。

引き続き今期の目標について。
中西選手のホームページに「5位以内にならないと何かする」とあるが(私は見ていない・・・)、それについて言及される。
中:「いや、目標を持たないと・・・、5位以内になってフロンターレが注目されたい。
昔は負けてもいいと思ったが、今はそう思わない。」
こうした会話の中、遂に「何か」が発表される。
それは・・・何と髪を剃るらしい!(会場騒然)。
戸塚氏にもそれを吹っかけ、強引に同意させる。
戸:「いや、こまったな。」と苦笑い。
同時に今期のキャプテンについても触れる。中西選手が言うには「200%僕以外」であるようです。


この後も様々な話題が飛び出し、会場は笑いと感嘆の繰り返し。
そして、中西選手に対する質問コーナーが。質疑応答を簡単に紹介します。
Q1:名古屋グランパスのピクシー(ストイコビッチ)選手と平野選手を止めるには。
A:彼らを止めるより、試合に勝つことが重要。

Q2:川口さん(横浜F・マリノス)からゴールを奪えますか。
A:以前川口選手と食事の際に、軽くあしらわれたそうです。

Q3:オフの間は何をしていますか。
A:こうしている(会場大爆笑)。

Q4:ベガルタ仙台に勝ったとき、小躍りしていましたが(詳しくは著書をどうぞ)。
A:携帯電話片手に小躍りしてました。

Q5:ベンゲル氏(元名古屋グランパスの監督)との親交はあるのか。
A:特にないけれど、メールは送ってます。
盛況のなか、前半の部が終了。
そしてオークションの開催へ。昨シーズン中西選手が愛用したユニフォーム類の売上で、「まだ試案だけれども、等々力のシーズンチケットを購入し、体が不自由な人などに来てもらいたい:中」との趣旨が説明される。
品目はユニフォーム類が3点、スパイク、そして目玉商品のキャプテンマーク。
欲しい、何としても欲しい。しかしオークションといえば、以前富士通サマーフェスティバルで招き猫(選手のサインが入った超レア品)を落札し損ねた経緯があるので、今回はうまくいくのだろうか?。

オークション品の紹介

観客に向け、オークションの品が公開される
写真は西が丘で幻のシュートを決めた際の
アウェーユニフォーム




オークションのスタート、出だしのユニフォーム類一式がいきなり6万円(それ以上だったか?)の高値で成立。
値段もさることながら、余りのテンポの速さに手も足も出ない。中西選手までこの流れに当惑しているようである。
そんな感じで、瞬く間にユニフォーム3着が競り落とされる。そしてお目当てのキャプテンマークへ。
競の開始と同時に理性が失せ、どんどん高値を叫びつづける。
気が付くと55,000円!!とねじり伏せる私の大声が、場内をこだましていました。
壇上に上がり、中西選手のサインが入ったキャプテンマークを、自ら袖に通してもらい、握手を交わす。
余りの感激に一瞬記憶を失い、オークション後の休憩時間に入っても、しばらく体が震えつづけていました。
すると、突如背広姿のセッキー氏が登場。彼もキャプテンマークを狙っていたとのこと。
じろじろ見つめるや、「ワリカンしょ」の言葉が。申し訳ないけど勘弁してネ。
フロンターレの歴史の証人であるキャプテンマーク、大事にそして毎試合装着するつもりです。
こうなると、責任重大ですね。絶対に粗末にできません。
※紹介方法が素っ気無いので、後日改めて紹介し直すつもりです。

キャプテンマーク一式

勢いだけで落札した、キャプテンマーク一式
中西選手が主に使用したのは、中央の黄色のもの
端数の5000円札がなかったので、60,000円渡しちゃいました
あのキャプテンマークが手元にあるなんて
今でも信じられないです



サインを求める長蛇の列

休憩時間中に、会場の片隅で著書の即売会が
その足で本にサインを求める為の長蛇の列が



サインに応じる中西選手

沢山の観客にも嫌な顔ひとつせずに
中西選手と戸塚氏は、せっせとサインを書いていました
ファンサービスの良さは全く変化なし


サイン会の時間が延びに伸び、ようやく後半の部がはじまる。
出だしは日本のサッカー界について。中西選手が持論を熱くそして冷静に語る。
中:「どうしろという答えはない。しかし議論をして欲しい!
目の前のことより、先を見てゆきたい。
個々のことはどうでも良い。サッカーが強くなり、日本の文化になって欲しい!!」
著書のあとがきにもある言葉を、かみ締めるように繰り返す姿が印象的でした。

そして契約更改の裏話や、シーズンの開催期間についても言及。
契約更改についての悪い習慣(ゴネて金額についてグダグダ言う)ことを戒したり、ヨーロッパと同様に8〜5月開催にするように提案。
中:「札幌の人は冬どうするのか?アウェイに出て死のロードをすればいい(会場爆笑)。
でもそうなれば、ヒーター付きのシートができるかも知れない(会場感嘆の渦)。
そうやって、議論を、議論を巻き起こして欲しい。」

続けてスポーツジャーナリストに着いても一言。
中:「日本のジャーナリストは、”自分”と言うものがない。(文を見ても)”私は・・・”がない!」
そうですね、日本のジャーナリストは出来事を伝えるのが中心ですから。
個性溢れるジャーナリストの出現と、その環境を作る読者の意識改革が必要でしょう。
まあ、こうやってくだらない文章を書く私も、人の事言えませんが。

そしてオリンピックの話題へ、選手の起用について敢えて実名を挙げて熱く意見を語る。
厳しいその指摘こそ、正にサッカー文化を思ってのことなんでしょうね。

再び話題は元に戻り、議論をいかに起こすか集中する。
中:「議論を起こすのは、先ずマスコミだ。」
戸:「サッカーは個々の見方があるので、そこで議論すればよい。」
続けて記事の内容について、戸塚氏が自戒を込めてこう語る。
戸:「マスコミはある批判に乗りやすい。それじゃ議論ではなく、たちの悪いいじめで、発展性がない。」
その言葉の重みに、会場からはうなずきが起こる。確かにスポーツ誌じゃなくとも、底の浅い批判記事は多くあるので。

話題に熱中

話題は幅広く、奥深い
夜遅く、大幅に時間はオーバーしているが
帰る人はごく僅か



そして話はサッカー以外の方向へ。
電車で練習場に通う話や、英語の勉強をし、いろいろな本(×M本まで!)を読みまくる話まで。
どれもすべて、キャパシティを広げるために実践しているとのことです。
それと「長い人生のために。どんな一流選手でも現役なのは10〜15年程度なので、それ以後の人生も重要:中」だと。
うーん、それだけの重みを語れるなんて、やっぱり只者ではありません。
ちなみに印象に残った言葉は、これです。
中:「僕のサッカーだけで見てくれる人に付いては、全然関心ない。何故ならサッカーを止めてしまえば、そういう人は僕から離れてしまうから。
すべての面で、僕を見て欲しい。」

話題は白熱し、ベンゲル氏&ストイコビッチ選手の存在や日本代表についてまで。
ベンゲル氏については「カリスマ性があり、選手の能力を引き出すだけの説得力がある:中」とコメント。会場からはオ〜〜とどよめきが。
ここで尊敬している選手についての質問が。
中:「特にいないけれど、ストイコビッチは凄い。愛国心の深さは只者じゃない。」
そして、ワールドカップの話に。勝利にこだわる意識の低さと、開催まで後2年しかない点を強調。
中:「2年もじゃなく、2年しかない、これじゃやばい。」
戸:「やばいですね。」
やばいと言うのは簡単ですが、実をもって語れる人はそう多くはないでしょう。
代表経験がない中西選手ですが、それ以上の苦しみを経験しているわけで、その一言は極めて大きな意味を持ちます。
中:「グダグダ言っていろいろ書かれてもいいが、議論が起こればよい。」
サッカー文化を推し進めるには、停滞は許されません。その意味でも議論は一つの提案でしょう。


時間は過ぎに過ぎ、予定を1時間オーバー。質問コーナーを経て、ようやく最後の挨拶へ。
戸:「自分の意見も大事だが、皆が良く感じるような取材をしたい。
それは無理だけれども、議論を重ねながら文化を深めたい。」
中:「この場を作ってくれて、そして本を買ってくれて感謝します。
プレイヤー、そして人間として成長したい。
日本のサッカー会を支えてゆきたい。
ボールを両手で大事に抱えて・・・。」
盛大な拍手の中、トークショーは無事に終了したのでありました。

中西選手

ショーが終了した後も、中西選手はファンに対して
丁寧に対応していました
写真写りが悪くて、本当に申し訳ありません・・・


トークショーをざっと振り返ってみましたが、いかがでしたでしょうか。
中西選手のサッカーにかける熱い想いと、懐の深い人間性がよく現れたトークショーでした。
見かけばかりじゃなく、内面も格好いい。どんなに努力しても彼の足元には及ばないかも・・・。
他にも書きたいことは多かったのですが、まとめ切れないほど話題が多く。掲載できないのが本当に悔しいです。
ちなみに個人的に気になったのは、この言葉です。
中:「日本では見るサッカーは成熟しつつあるが、議論するサッカーはこれからだ。」
ギ・ク・リ!これは私にぴったり該当するではないか。
少しでも議論できるように、レベルアップしなければ。
でも・・・結局競技場で騒ぐのがオチかも。ああ悲しい・・・。



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