大分トリニータ VS 川崎フロンターレ

〜 2002 J2 第42節 〜



日   時 2002年11月9日 14:00
試合会場 大分スポーツ公園総合競技場 ビッグアイ (大分県大分市)
天   候 晴れ
観 客 数 24,131人
試  合  結  果
大   分 前  半 川   
後  半
     
     
     
得   点   者
高松 大樹 18分   10分 マーロン
高松 大樹 34分      


奇跡の逆転昇格へ向け、激戦が続くフロンターレ。過酷かつ過密なリーグ戦も、秋風と共に終焉も間近。
この日の対戦相手は4年越しの夢をかなえ、一足早くJ1昇格を果たした大分トリニータ。
大分も長年の目標を達成し、安堵の日々なのか?。いや、ホームでのJ2優勝を狙い、フロンターレの息の根を潰すつもりであろう。
大分の目論見はともかく、フロンターレは意地でも落とせない一戦。この勝負を落とすと同時に、J1昇格が消え去る可能性との背中合わせ。
今は勝負に集中し、最後まで諦めずに全力勝負を挑め。今のフロンターレに課せられた使命は、それだけである。

燃え盛る大分サポーター

スタジアムには、キックオフ1時間前に到着
ホーム側ゴール裏は、既に大分サポーターの熱気が充満
J1昇格を決め、この日はホームでのJ2優勝も狙う
濃紺のプラカードを掲げ、意気込みも十分だ
しかもウェーブまで飛び出す



フロンターレサポーターも負けてはいない

対するフロンターレサポーターも、気持ちでは負けない
大分と遠方にも関わらず、多くのサポーターが
広大なゴール裏に終結
奇跡のJ1昇格に向け、こちらも気迫満点だ



?

足元に見覚えのある大きな布が
そう、これこそサポーターの願いが凝縮された・・・



ビッグフラグが掲げられる

ビッグフラグが堂々と掲げられる
絶対に落とせない一戦だけに
事前準備も万端
ピッチ上の選手たちを、必ずや奮い立たせるぞ!


南国の大分とは想像し難い冷風が、スタジアムに容赦なく吹き付ける。震えるような寒さで声帯も萎縮し、想像以上に声が出ない。
しかし、勝負は我々に猶予を許さない。運命の一戦は刻一刻と、キックオフを迎えてしまう。
さあ、やるぞ!。大分の優勝を阻止すると同時に、J1昇格の夢を絶やしてなるものか!!
両チームサポーターの魂が激しく交錯する中、決戦の火蓋は切って落とされた。
お〜〜〜、バモかわさ〜〜〜
かわーさ〜、かわーさ〜、
バモかわさ〜〜〜

ファビーニョ選手と長橋選手

大分のファビーニョ選手(背番号10:MF)に対し
長橋選手(背番号20:MF)が背後から接近
序盤から激しい攻防の予感


ピッチも相当に冷え込んでいるのか?、あるいは単に序盤特有の現象なのか?
サポーターの熱気とは裏腹に、至って地味な立ち上がり。大分の先制パンチを凌いだフロンターレが前線をうかがうも、大分の充実した中盤が、その行く手を遮る。
大分が左サイドから鋭い突破。圧倒的な応援の後押しを受け、角度が厳しいながらも弾丸シュートを放って来た。
フロンターレも中盤まで戻し、ロングパスで活路を開く。右サイドからの鋭い折り返しを、大分ゴール前でヘッドで繋ぎ、至近距離からマーロン選手(背番号33:FW)がヘッドを放つ。

フロンターレはなおもチャンスをうかがう。しかし、大分の中盤も守備意識が高く、更には浮氣選手(背番号5:MF)を軸に、多彩な攻撃を仕掛けてくる。
フロンターレも黙らずに反撃開始。右サイドから長橋選手がお得意のクロスを放つものの、残念ながら前線に対応する選手はおらず。
ピッチは早くも大荒れの様相。キックオフから10分も経過していないのに、芝生の剥がれ随所に目立っている。

芝生の剥がれが目立つピッチ

芝生の剥がれがかなり気になる
W杯終了後の管理状況など
傍目ながらも気になるところ
特にJ1では激しいプレーも予想されるので
頑丈な芝を育てて欲しい


フロンターレは今野選手(背番号18:MF)がロングパス。それに合わせて茂原選手(背番号14:MF)が走り込むも、惜しくもボールは岡中選手(背番号1:GK)の手中。
大分も速攻からシュートを繰り出す。試合開始直後の平凡な光景も一変し、いまや過去の話である。
そんな折、フロンターレにフリーキックが到来。ベンチーニョ選手(背番号9:FW)が放ったボールは、ファーサイド方向へと流れてゆく。
だが、そこにはマーロン選手(背番号33:FW)の姿が。混戦の中繰り出した渾身のシュートが、大分ゴールへと突き刺さる。
やったぞ!希望を託した
先制ゴール!!

しかし、その代償は余りに重かった、直後に過酷な現実が待ち受けるとは・・・。

マーロン選手がゴール脇で崩れ落ち、そのまま試合が再開。一向に立ち上がる気配を見せず、苦しくもがいたままである。
トレーナーが駆けつけ懸命の治療を施すも、既に手遅れであった。直後コーチボックスに向け、トレーナーが大きく×マークを示す。
先制ゴールと引き換えに、マーロン選手がまさかの負傷退場。サポーターからも「うそぉ・・・」と、心配の声が随所で漏れる。
満面の笑みも一瞬にして失せてしまう。一方試合は着々と進み、はるか彼方では大分が猛攻を仕掛けている。

マーロン選手の先制ゴール

マーロン選手が意地の一撃!
待望の先制ゴールが決まったぞ!



先制ゴールを喜ぶサポーター

サポーターも満面の笑みで、先制ゴールを祝う
だが、それもつかの間の出来事



マーロン選手が負傷退場

先制ゴールと引き換えに
マーロン選手がまさかの負傷退場
信じがたいアクシデントに
サポーターの表情は一気に引きつる


一人少ないフロンターレは、しばし劣勢の時を過ごす。大分の攻撃を辛うじて断ち切り、マーロン選手に代わり小林選手(背番号21:FW)を投入。
数的不利を凌いだフロンターレは、お返しとばかりに中盤をじりじりと繋ぐ。右サイドの長橋選手にパスを繰り出し、ボールを受けた長橋選手が一直線に駆け上がる。
しかし、ゴールライン付近でバランスを崩し、フィニッシュも乱れてしまう。対する大分のスピードはやや控えめながらも、確実に攻め返すあたりは、J1昇格を決めた実力か。
大分はフリーキックからヘディングシュートを放つ。絶妙のタイミングで叩かれたボールは、あわやフロンターレゴールに吸い込まれそうになる。

懸命の守備でコーナーキックに逃れたフロンターレ。混戦の中大分の猛攻を耐えたと思った矢先、不注意から大分の選手を押し倒し、フリーキックを与えてしまう。
些細なプレーと思いきや、これはどんだ致命傷。吉田選手(背番号9:FW)が放ったボールは、高松選手(背番号13:FW)の足をとらえ、軽快にシュートを繰り出した。
不用意なプレーから、大分の同点ゴールを招いてしまう。悔やんでも悔やみ切れない瞬間であった。

大分の猛攻

大分の鋭いシュートが、フロンターレゴールを襲う
一度は持ちこたえたかに思えたが・・・



大分の同点ゴール

直後、不用意なプレーから、同点ゴールを許す
折角のリードも短時間で途切れた瞬間


くそぉ・・・、だが試合はここからだ。サポーターも落胆の素振りを殆ど見せず、気持ちを込めて応援を繰り広げる。
お〜〜〜、バモかわさ〜〜〜
かわーさ〜、かわーさ〜、
バモかわさ〜〜〜

フロンターレは伊藤宏樹選手(背番号2:DF)が攻撃参加。右サイドの空いたスペースを生かし、ドリブルでの突破を図る。
残念ながらもこの試みは失敗。大分の応援も勢いを増す中、フロンターレは次の手を打ってきた。
右サイドで華麗なワン・ツーを披露。それでも目立った展開には乏しく、程なく大分の逆襲を許してしまう。

フロンターレも懸命に食い下がる。なおも右サイドを攻め続け、鋭いクロスからベンチーニョ選手がヘディングシュート。
加速度的に攻めるフロンターレ。中盤でボールを一旦止め、盛んに大分サイドへの攻略を図る。
だが、大分も決して慌てていない。フロンターレの攻撃が意外と単調なのか、守備体制が徐々に整理。
故に突破は図り難い。攻撃のバリエーションを増やさねば、実力派の大分に太刀打ち不能。

ならばとロングパスで一気の逆襲。今野選手にボールを合わせるも、三木選手(背番号2:DF)がうまく体を入れ、易々とチャンスを与えない。
続けて左サイドを攻略。長めのワン・ツーでボールを繋ぎ、ポスト気味に中央後ろへ戻す。
ベンチーニョ選手が古巣相手に火を吐き、シュートの体勢。ここは気合が空回りし、大分を突き放すには至らない。

今野選手と三木選手

今野選手(左)を食い止めた三木選手(右)
一見すると地味なプレーではあるが
この堅実さこそが、大分の守備力の要因



右サイド突破の効果は?

大分のパスミスに乗じ、フロンターレが逆襲
大分に僅かに残るミスに付け入り
チャンスを生かしたい


バモバモスかわさ〜
バモバモスかわさ〜
バモスかわさ〜、バモスかわさ〜〜

ゆったりとした応援で、エールを送るサポーター。今は同点に追いつかれたのみ、慌てる必要は無い。
だが、その魂胆は甘過ぎたのか。大分が有意な状況のまま、フリーキックの場面を得る。
私が一瞬目を離した隙に、素早いリスタート。この位置、この角度・・・、先制点と類似の状況だ。
嫌な予感が的中する間も無く、非情のシーンが視界に入る。事もあろうに、大分のゴールが突き刺さっているではないか!

何だか状況がのみ込めない。慌てて電光掲示板のリプレイを見つめる。
一度はクリアしかけたかにも思えたが、こぼれ球を高松選手が、振り向きざまに豪快な一撃を放つとは・・・。
ショックを整理する間も無く、試合は再開。フロンターレも速攻からシュートを繰り出すが、ゴール枠を捉えるには至らない。

大分に失点を喫す

再びセットプレーからの失点
しかも、ゴール正面からまんまと叩き込まれる点も
先の失点と同様である



PKならず

リスタート直後、フロンターレが必死の反撃
中にはペナルティエリア内で
倒されたような場面も
しかし、PKの判定には至らない


何故だ!何故PKにならないのか!!
不可解な判定にサポーターも怒り心頭。先ほどから他会場の途中経過が電光掲示板に流れるが、誰の眼中にも入らない。
テロップに流れるのは、新潟VS大宮戦の途中経過(同時刻にキックオフ)。先程は新潟が1点ビハインドであったが、更に2点差に拡大している。
だが、他会場の経過を受け入れる余裕は喪失した。先程は新潟のビハインドに笑みを浮かべたサポーターも、喜びを増すどころか表情には、一点の変化も見せない。

セレッソVS水戸戦は1-1の同点。そんな間にも時は流れ、大分が試合を掌握しつつあるかのようだ。
とにかく流れがフロンターレに傾かない。そんな危惧を払拭すべきかの如く、左サイドに起死回生のロングパス。
大分の選手がファウルを犯し、フリーキックが到来。ボールを地面に置くベンチーニョ選手に、サポーターからは待望のコールが沸き起こる。
だが、その願いも一瞬にして断ち切られる。大分のたった2枚の壁にボールが衝突し、待望のチャンスを生かす術も無い。
続けて右サイドからの巻き込みを図る。鋭い折り返しにベンチーニョ選手が合わせるがファウルの判定。
芽生えつつあったで勢いも、一瞬にして沈静化してしまう。

険しい表情のサポーター

思い通りに描けない展開に
サポーターの表情も険しさを増してきた


どうしても理想の展開に持ち込めない。だが、焦るのは全然早過ぎる。
大分だって完璧なチームとは違う。必ずどこかに弱点や隙はある。
まだ試合は半分も折り返していない。今は落ち着いて攻め、確実にチャンスを引き寄せたい。
しかし、その願いも裏腹なのか。中盤を厚くし余裕の構えを見せる大分に対し、フロンターレは落ち着きを欠き、まごついた印象は否めない。

レッツゴー、レッツゴー!(どんどん)
レッツゴー、レッツゴー!(どんどん)
強い冷風が喉を冷やし、声量も低下の一途。それでもサポーターは懸命に声を振り絞る。
そんな間にも、試合はロスタイム間近。フロンターレは度重なる大分の攻撃を凌ぎ、しつこく右サイドを突いてきた。
ボールを中央に戻し、強力な一撃。意外性溢れるミドルシュートを狙ったつもりなのか、ボールは大分の選手に敢え無く衝突。
余りに強引過ぎるプレーに、苛立ちも増すばかりである。

・・・とその直後に状況一変。素早い攻撃から、ベンチーニョ選手が鋭いシュート!。
岡中選手が手で弾き、ボールはゴールラインを割り込んだ。
さあ、待望のコーナーキックだ・・・。しかし主審の判定は、大分のゴールキックではあるまいか!
何故だぁ!まさかの判定にサポーターは憤り、激しいブーイングが交錯する。

前半もロスタイム

前半もロスタイム間近になれど
両者の攻防に大きな変化は無い
しかし・・・浮氣って選手は
去年の山形時代では余り際立った
選手とは思えなかったが
大分に移籍後は、存在感が抜群
攻撃の機軸として、彼の貢献度は計り知れない


無意識の間に、前半もロスタイムに突入。電光掲示板の時刻表示は既に消灯し、フロンターレは気迫一筋で大分ゴールに迫る。
右サイドに強いパスが通る。大分の選手に触れてタッチラインを割ったかに見えたが、判定はまたもや大分のスローイン
何故だぁぁぁ!!サポーターが憮然とした表情を浮かべ、直後前半終了の長いホイッスルが鳴り響く。
厳しい展開に、サポーターも動揺を隠せないのか。深く座席に腰掛け、他会場の経過をじっと見詰めるのが精一杯なのであろうか・・・。

ハーフタイム中に他会場の経過を確認。新潟は2点ビハインドのままであるが、セレッソは水戸に1点リード。
このままの得点状況で試合が終わり、セレッソが勝利を飾れば、フロンターレのJ1昇格の可能性は完全に消え去ってしまう。
身震いするような重苦しい空気が、フロンターレゴール裏に漂っている。

元気に欠くサポーター

懸命の応援も実らず、大分にリードを許す
多くのサポーターは、少々元気が無いようだ
はるばる遠路を駆けつけただけに
是が非でも逆転勝利を味わいたい


ジェット風船飛ばし

対する大分のサポーターは
ハーフタイム恒例のジェット風船飛ばし
いわば、「影の川崎、陽の大分」
余りに対極的な光景だ


オオオオオオオ〜、オオオオオ〜
オオオオオオオ〜、オオオオオ〜
サポーターも運命を共にする。前半のショックを断ち切り、再び応援に立ち上がる。
今我々に出来る事・・・それは懸命の応援で、フロンターレに奇跡を起こすのみ。
行くぞ!最後の最後のその瞬間まで、全力で戦い抜くぞ!!
可能性を信じ、フロンターレに必ずや、逆転勝利を呼び込むぞ!!!
フロンターレ〜、フロンターレ〜
フロンターレ、おお〜

レッツゴー、レッツゴー!(どんどん)
レッツゴー、レッツゴー!(どんどん)
オーオオー、レッツゴー川崎〜
オーオオー、フロンターレー

応援再開

サポーターに出来るのは、懸命なサポートのみ
かつてない危機的状況ではあるが
勝利を信じ、力の限り応援するぞ!


極度に応援に燃える私。キックオフから一体、何分経過したであろうか?。
ピッチ上に倒れる茂原選手の姿が目に飛び込むまでは、応援が僅かでも途切れたのであろうか?。
それぐらい応援にのめり込んだ。スタジアムの空気は更に冷え、声量はなおも寂しい限り。
喉も相当苦しいが、応援を決して止めてはならない。万が一にも止めようなら、全てが水泡に化してしまう。

それでも試合を見つめよう。フロンターレが待望のフリーキックを得ているぞ。
キッカーはお決まりのベンチーニョ選手。大分の選手が主審に何度も注意を受け、ここは神経質になっている。
ならば絶好のチャンスである。頼むぞ、絶対に同点に追いついてくれ。
しかし、思い描いたシナリオにはならず。鋭いボールは岡中選手の正面に飛び、敢え無くキャッチされてしまう。

岡中選手がシュートをキャッチ

等々力でファンブルを犯した岡中選手も
これはきっちりとセーブする


なおもフロンターレは攻め立てる。選手一人一人の懸命さは、痛いほど強く伝わってくる。
茂原選手や塩川選手(背番号15:MF)も、必死にボールを追う。だが肝心の連携面が、依然として雑なまま。
一人一人の気迫が先走っているようで、どうも結果が伴わない。誰かが鋭いクロスを放ったものの、ゴール前の選手と呼吸があわない。
守備面でも余裕の大分に対し、フロンターレには乱れが。DF間の連携が崩れ、大分にボールを奪われそうになった岡山選手(背番号32:DF)が、慌ててバックパスをする始末。

J1昇格を決めた者と決めざる者。両者の違いは余りにも違い、心苦しい限りだ。
だが、勝負を捨てる訳には行かない。誰もが待ちわびるJ1昇格切符、それを手中にするまでは。
「J1参入戦の根性を見せろよ!」。サポーターの誰かが、そう叫んだ。
参入戦の屈辱から4年余りが経過。それを知る選手も、大半はチームを去った。
私も参入戦以降のサポーターであり、参入戦の雰囲気は知る由も無い。

ただ、これだけは言いたい。勝負への信念を、どんな場でも絶対に捨ててはならない・・・と。
J2とは比較にならない、華やかなJ1の世界。誰もが憧れる栄光の舞台、その階段への最大の障害が、今まさに訪れている。
これを乗り越えねば、目的は達成不能。実に厳しい条件ではあるが、意地でもクリアしなければ。

吉田選手の突破

大分は前を向いて戦っている
吉田選手の突破に対し、フロンターレは
食い止める術を持たないのであろうか


寒さは一段と厳しさを増す。声量が徐々に低下しているのは、誰にでも体感出来る。
サポーターは一呼吸おき、思い出したように応援再開。この想いこの気持ち、冷風に屈してなるものか!
レッツゴー、レッツゴー!(どんどん)
レッツゴー、レッツゴー!(どんどん)

試合も残すは30分前後。残された時間に全てを注ぎ、悔いの無き勝負を挑め!
だが、大分も手加減の素振りを見せない。吉田選手がフロンターレDFを巧みに振り切り、鋭いクロスを繰り出した。
接触プレーのあおりを受け、大分の選手がフロンターレゴール前で倒れている。ボールがフロンターレの選手に渡るや、サポーターは「(ボールを外に)出すな!」「出すな!」の大絶叫。
サポーターの声も険しさを増す。新潟VS大宮戦は、新潟が1点返したようであるが、もはや誰も気にとめない。

大分の選手が倒れている

普通ならボールをピッチ外に蹴り出す場面
サポーターの声に影響を受けたか
フロンターレの選手はプレーを続行
冷酷ではあるが、時には厳しさも必要なのだ


だが、真の意味で過酷なのは、フロンターレの境遇である。
再びフリーキックのチャンスを得るも、ボールは再び岡中選手の正面へ。
ボールコントロールも乱れが顕著。苛立ちを隠せない長橋選手が、地面を思いっきり蹴り付ける。
ここは冷静になって欲しい。勝負を投げ捨ててしまっては、元も子もないのだから。

対する大分は自由変化のボール回し。落ち着きを欠くフロンターレとは、余りにも対照的な姿である。
フロンターレはコーナーキックの場面到来。ニヤサイドのボールは大分の選手に当たり、ゴールラインを割ったかのようだ。
しかし、判定は大分のゴールキック。変哲も無い判定も、実に冷たく思えるのが辛い所在だ。
ピッチに舞い込む冷風が、勝手な思いを掻き立てる。フロンターレの反撃も短命に終わり、大分が黙々と攻め戻す。
フロンターレも黄川田選手(背番号16:FW)を投入。ここに及び、最後の勝負に出たようだ。

気持ちも空回り

フロンターレの懸命さは、私でも理解出来る
しかし、どうしても結果が導けない
そんな間にも残された猶予は
刻々と減少してしまう


セレッソはリードを広げている。状況から判断すれば、セレッソの勝利は濃厚だ。
フロンターレは本当に、後が無くなりつつある。大分の岡中選手が負傷し、試合はしばし中断する。
体も芯から冷え切ってしまいそうだ。戦闘本能も冷やさぬよう、気を張っていなければ。
長き中断も終わり、試合が再開。直後猛攻を仕掛けてきたのは、1点リードの大分ではないか!
何たる悲劇、大分の気迫が完璧に勝るとは・・・。

フロンターレは完全に防戦一方。大分の波状攻撃に対し、ただ必死に耐え凌ぐだけ。
悪夢のような時間帯もようやく過ぎ去り、フロンターレがカウンター。久々のコーナーキックの場面で、サポーターようやく仕切り直し。
ショートコーナーからゴールを狙うフロンターレ。奇しくも足元のボールは保ち切れず、大分に奪取されてしまう。
大分は猛然とカウンター。フロンターレのペナルティエリア内に高松選手が侵入し、ハットトリックを狙う公算なのか。
フロンターレも2人がかりで懸命に食い止める。鬼木選手(背番号7:MF)も守備に入り、この危機を冷静に救う。

大分の中盤

大分の中盤は崩れの予兆を、全く感じさせない
守備面でも依然安定しており
正直苦しさは増すばかり


残り時間も刻々と減少。電光掲示板の表示が、ただ恨めしい限り。
大分の長いパス回しに、フロンターレは足がついて行けない。ピッチは随所で芝生がめくれ、足元の罠も敵である。
芝生云々で文句は言わないで欲しい。大分だって同条件で戦っているのであるし。

その後はフロンターレが優位に展開。大分サイドへと深く攻め立て、盛んにプレッシャーを与えている。
そして待望のフリーキックが、位置・角度的にも申し分無く、まさに「絶好」の言葉が相応しい。
サポーターも緊張感溢れるコールをピッチに送る。ベンチーニョ選手よ、今までの失敗は全て忘れよう。
今度こそ、今度こそ頼むぞ。夢と希望を皆に与えてくれ・・・。

ベンチーニョ選手のフリーキック

渾身のキックは、果たして・・・


多くの願いをのせ、渾身のキックが放たれた。鋭い弾丸ライナーが、大分のゴールへと迫る・・・筈であった。
だが、かすかな願いも贅沢過ぎたのか。再び大分の壁に激突し、この機会も逃してしまう。
電光掲示板には他会場の試合経過が流れる。新潟は大宮に追いつき、フロンターレはますます窮地に立たされる。
選手達は経過に目を向けてはならない。いや、経過を知るのであれば、この勝負の重要性が一層身にしみる筈である。

過酷なJ2生活を、来年も過ごさねばならないのか?。勝負師であれば誰であれ、華やかな舞台に立ちたい筈だ。
そんな気持ちとは裏腹に、大分が怒涛のカウンター。伊藤宏樹選手がパスカットしていなければ、確実に1点失っていたであろう。
安堵の息をつく間も無く、試合は黙々と進行する。

必死なサポーター

我々に負けは許されない
天国と地獄、その狭間に揺られつつ
ピッチに懸命に声援を送るのみ


試合時間は減少の一途。電光掲示板の表示も40分を回り、残された猶予は僅かである。
フロンターレはパワープレーで大分を攻め立てる。コーナーキックからの跳ね返りから低いセンタリングを繰り出し、我那覇選手(背番号27:FW)が大分ゴールへと迫る。
押せ!攻めろ!!。心からの望みも結果に直結せず、気が付けば時刻表示も残り1分を切ろうとしている。
遂には電光掲示板から、時刻表示が消灯。ロスタイムは3分と、逆転には十分な猶予である。
最後の可能性を信じ、サポーターも気迫がほとばしる。太鼓の打音はより鋭く、声量も一気にアップ。
サポーターの眼光は険しさを増し、勝負への執念は一気に爆発する。
フロンターレ〜、フロンターレ〜
フロンターレ、おお〜

厳しい応援

これ程までに熱く・厳しく・気持ちの伝わる応援は
滅多に体験出来るものではない
窮地に立たされた今、僅かな可能性を信じ
持てる力を振り絞るのみ



懸命の戦い

ピッチ上の選手たちも懸命に戦う
まだ夢が断ち切られた訳では無い!


ロスタイムは緊迫の連続。フロンターレも幾度となくチャンスを掴み、全身全霊の勝負を挑む。
主審も腕時計を見ていない。時間はある!まだまだ夢は残っている!!
ベンチーニョ選手が渾身のフリーキック。冷静に判断すれば、これが最後のチャンス。
沢山の希望をのせたボールは無常にも、大分のゴールを外してしまう・・・。

これが本当に最後のチャンスであった。程なく主審の長い笛が響き。J2優勝を手中におさめた大分の歓喜が、場内を一面に埋め尽くす。
それは同時に、フロンターレのJ1昇格の可能性が、完全に喪失した瞬間でもある。サポーターの共通の偉大な目標は、遂に果たせなかった。

大分の勝利

激戦を制し、大分がJ2優勝を決めた瞬間
コーチボックスから選手・スタッフが飛び出し
ピッチ上は一気にお祭りムード



無念のサポーター

フロンターレサポーターからは、言葉が失った
ある者は力ない視線でピッチを見つめ
ある者はうつろな視線で、天を仰ぐ
悲願のJ1昇格は、残念ながら夢で終わってしまった



紙ふぶきが舞う大分ゴール裏

喜びに沸くスタジアムの模様をちょっと紹介
ゴール裏からは盛大な紙ふぶきが舞い
4年越しの悲願を祝福する



喜びに溢れる選手たち

遥か遠方側から見ても
選手たちの喜び振りは肌に伝わる
大分には心から、祝福の言葉を述べたい



胴上げ

最後に監督・コーチらが胴上げ
ああ、実にうらやましい光景だ・・・


悲願のJ1復帰は果たせなかった。選手達が最後まで懸命に戦った結果、これが全てである。
実力が一歩及ばなかっただけであり、J2残留への後悔は一切無い。
勝負の重要性を再認識させられた、貴重な一戦であった。一切の手加減無しに戦った大分イレブンには、感謝の念以外あり得ない。
来年大分と対戦出来ないのは至極残念ではあるが、フロンターレが来季J1に昇格すれば、全てが解決するだけの事である。
その日が訪れるまで、精進を重ねるのみ。大分とJ1で勝負する夢を描き、大分での夜を過ごします。

<フロンターレの出場メンバー>
GK:浦上
DF:伊藤(宏)・岡山・渡辺
MF:鬼木・塩川・茂原・長橋・今野
FW:ベンチーニョ・マーロン
SUB:相澤・マルキーニョ・黄川田・小林・我那覇
<フロンターレの選手交代>
マーロン>小林(14分)
今野>我那覇(45分)
長橋>黄川田(78分)



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