キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM
インスピレーション
(2009.05.29 最終更新)
2004.06.26に発売された、キヤノンの高倍率ズームレンズ、「EF28-300mm F3.5-5.6L
IS USM」。
旧モデルの「EF35-350mm F3.5-5.6L USM」のリファイン版として登場。強力なIS(手ぶれ補正機能)を搭載し、デジタル一眼レフカメラを想定した光学系へと一新され、最新技術満載のレンズへと変貌を遂げた。
28-300mmと高倍率ズームながら、タムロン、シグマとは傾向が全く異なる超ど級レンズ。Lの称号を掲げるだけあり、その実力は如何なるものでしょうか?
細かい前置きはどーでも良いので、早速レポートをどうぞ。
手持ちのレンズをバックに撮影。外観はEF35-350mm F3.5-5.6L USMとほぼ同一。
付属のフード(EW-83G)は花形で植毛加工された本格的なものだが、
フルサイズ対応でもあり広角側のケラレを防止するため、サイズが控えめなのは止むを得ない。
左側面に各種スイッチが並ぶ。ISの切り替えがON/OFF表示となり、旧来のISレンズよりも分かりやすくなった。
スイッチは意外と軽く、バックの中でずれる時があり。
いざ撮影すると、AFやISがOFFに切り替わってしまうこともままある。
上が広角側で縮めた状態、下が望遠側で伸ばしきった状態。
ズームは直進式で、一般的な回転式とは異なり、筐体を前後する事で広角−望遠を切り替える。
ボディが相当重く(本体:1,670g)、ズーミング中に手元が震えやすいので、可能であれば三脚or一脚は用意したい。
前後の動きの固さについては、リングを回すことで調整可能。
− 使用感について −
5年余り使用した感想です。ざっくばらんに書いてみました。
28-300mmの機動力を生かすには、ある程度の努力(=筋力アップ)が必要でしょうか。
画質は並みの高倍率ズームを圧倒。AFも高速かつ正確な部類。 動体予測AF(AIサーボ)使用時でも迷いが少なく、安心感も高い。 AFの安定感に関すれば、超望遠系の単焦点レンズより上かも知れない。 |
極めて強力かつ省電力のISが魅力。手ぶれ補正機能は最強ながら、電池の消耗量はIS非搭載レンズと遜色なく、AFの速度低下も殆ど無視出来る。 |
高倍率ズームとは思えぬシャープさ、デジタル一眼レフとの相性は最高。 ヘタな単焦点レンズよりは、描画力は優る可能性は高い(特に逆光時)。 |
しかし高倍率ズームの宿命か、周辺部の歪みは(特に広角側)は不可避。 単焦点のLレンズと比べると、描画力はやはり劣る模様。 一部には70-200mm F2.8Lと互角説もあるが、それは疑問。24-70mm F2.8辺りの世代よりは、描画性能が多少劣る可能性大。 |
本体1,670Kgの重さは体に堪える、カメラ込みだと最低でも2kg半ばとなり、筋力の弱い方には辛い重量と言わざる得いない。 |
直進式ズームは慣れないと使い勝手で難あり。 300mmだと微妙にロックがかかり、広角側に引き戻す際に余計な力が入り、 ズーミングがワンテンポ遅れるのは弱点。 ただ、半年以上使い込んだ時点で、ロックは自然に?解消された。 |
ISは搭載するが、基本的に手持ち撮影には不向き。 慣れれば自在に振り回せなくもないが、しっかりした三脚か一脚は欲しいところ。 |
F値は3.5-5.6と暗めなので、暗所は弱め。この辺は並みの高倍率ズームと大差ないので注意。 ただ、ISO800程度に上げてもノイズは極少、キヤノンの機種は高感度に強いため、十分クリアな画質が得られる。 |
Kiss Digitalや20D/30Dのグリップは、お世辞にも頼りない。 ボディが滑りやすく、しばらくボディを握っていると手が痛くなるのはご愛嬌。 本来ならば、D1系統とのペアが正解だろう(・・・て、さすがに高過ぎて手が出ない)。 |
防塵・防滴構造ではあるが、直進式ズームなので、どうしても埃は吸いやすい。 大雨時に撮影後、レンズ内に水滴がたまって修理に出した経験あり(一応は防水カバーは装着したが・・・)。 |
購入から2年半後に、内部のねじが外れて修理に出した。 動きが激しい直進式ズームの宿命だろうが、「L」の称号を語るだけに残念。 修理は1週間弱で終了。費用は・・・忘れた。 |
ISの耐久性は疑問。購入5年目にして既に2回故障。 ISはEOSシリーズの命でもあり、「L」の称号を名乗る以上はしっかりして欲しい。 |
50Dとの組み合わせも悪くは無い。 1,510万画素だが、しっかりとした画質は確保されている。 |
− 強力なISとエントリークラスを遥かに上回る画質が魅力 −
取り敢えずの撮影サンプル&各種レンズとの比較です。一部の写真を除き、画像をクリックするとオリジナルサイズでご覧頂けます。
ISは常にON(モード1)で撮影しています。
高倍率ズーム対決:望遠側300mmでの撮影 (画像をクリックすると実サイズで表示されます) |
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キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM |
シグマ 28-300mm F3.5-5.6 MACRO |
絞り優先AE(F5.6) , AWB , ISO 100 , JPEG Large Fine |
この勝負はキヤノンが圧勝。条件によっては更に差が出そうで、普及クラスの高倍率ズームがつけ入る隙は全くなさそうだ。 特に周辺部の違いに着目。ただ、フルサイズの場合は共に光量の低下が激しい模様につき、APS-C環境での前提つき。 |
単焦点レンズとの対決1:100mmでの撮影 (画像をクリックすると実サイズで表示されます) |
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キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM |
キヤノン EF100mm F2.0 USM |
絞り優先AE(F5.0) , AWB , ISO 100 , JPEG Large Fine |
非L系の単焦点レンズとは互角に渡り合える描画性能。 中央部の解像力では、むしろ普通の単焦点レンズを上回るかもしれない。 背景のボケ具合に関すれば、 EF28-300mm F3.5-5.6L IS USMの方が硬質で、高倍率ズームの束縛から完全に脱してはいない。 |
単焦点レンズとの対決2:300mmでの撮影 (画像をクリックすると実サイズで表示されます) |
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キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM |
キヤノン EF300mm F4.0L IS USM |
絞り優先AE(F8.0) , AWB , ISO 100 , JPEG Large Fine |
さすがにEF300mm F4.0L IS USMにはかなわない。画質のキレ・ボケ具合共に、Lの単焦点(ものにもよるであろうが)の領域には届かない。 但し、ISの効果とAFの高速性では、新型のユニットを搭載するEF28-300mmF3.5-5.6L IS USMが圧倒的に勝る。 |
IS(手ぶれ補正機能)のON/OFF比較 | |
IS ON |
IS OFF |
面倒くさいので、絞り優先AE(F5.6)で撮影 シャッター速度は共に1/10程度 AWB ISO 100相当 JPEG Large Fine |
シャッター速度比、3段分ISの効果は絶大!サンプルは暗い室内で無謀にも300mmで手持ち撮影したが、余りの威力に舌を巻いた。 これは強力な武器。但し基本はしっかり構えての撮影。 ISをONにしてもAF速度の低下とバッテリの消耗は極小なので、常にONで構わないと思う。 |
キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USMで撮れ! スナップ編:その2(画像をクリックすると実サイズで表示されます) |
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キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USMで撮れ! スナップ編:その3(画像をクリックすると実サイズで表示されます) |
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キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USMで撮れ! こいのぼり編(画像をクリックすると実サイズで表示されます) |
30D , 絞り優先AE(100mm F7.1 1/640秒) , 太陽光 , ISO 125 , RAW (DPP 3.0にてJPEG変換) , sRGB , ピクチャースタイル : スタンダード シャープネス : 4 , 色の濃さ : +1 , 色合い : -1 空中を元気に泳ぐこいのぼり。 右上の棒の木目も鮮明に描画、細部の解像力もなかなかのもの。 重さとサイズを苦としないのであれば、お散歩レンズとしても悪くはない。 |
キヤノン EF28-300mm F3.5-5.6L IS USMで撮れ! 横断幕編(画像をクリックすると実サイズで表示されます) |
50D , 絞り優先AE(80mm F9.0 1/200秒) , 太陽光 , ISO 100 , RAW (DPP 3.5にてJPEG変換) , sRGB , ピクチャースタイル : スタンダード シャープネス : 4 , 色の濃さ : +1 , 色合い : -1 オフシーズン恒例の巨大横断幕制作。出来たてほやほやのお披露目シーン。 絞った効果は抜群で、細部の描画力もさすがの一言。 鉄骨を止めるボルトや、座席番号の数値もしっかりと描画。 50Dの高画素数も無理なく発揮されている。 |