撮影日:2005年12月31日
木更津駅の4番ホーム、柔らかな朝日が隙間からこぼれ、古びた気動車が停車中。 キハ30 98に乗車し、師走の久留里線の旅がスタートします。 |
車体の側面を見渡すと、こんなマークを発見。 久留里線沿線の君津市−木更津市−袖ヶ浦市のシンボルをモチーフ 久留里線は首都圏では稀有の全線非電化区間、全長32.2Kmの路線です。 |
製造から40年近く経過した車内は、白が基調ですっきりな印象。 未だ非冷房と古さは残るものの、清掃状態は良好。 |
盛大なエンジン音を響かせながら、キハ30 98は木更津駅のホームを後にします。 荒涼とした内房総の風景と共に、列車はゆっくりと走ります。 |
最初の交換可能駅である横田駅に到着。 鈍いブレーキ音を響かせつつ、列車は駅ホームに進入します。 停車と同時に、駅ホームから係員が登場。運転室から鉄の輪を受け取るや、 反対側ホームへ駆け足で移動します。 |
対向車両が出発後、係員が駆け足で戻ってきました。 右手にもつ鉄の輪が、不思議にも気になる存在です。 |
係員が運転士に鉄の輪を渡す事で、列車が出発体勢に入ります。 この鉄の輪は「タブレット」と称し、運転士が係員からタブレットを 受け取らない限りは運行出来ないルールと。 端的に書くと、ひとつの運転区間でタブレットを持つ列車を唯一とさせ、 単線区間での列車衝突を未然に防ぎます。 自動化が当然の時代に頑固なまでにタブレット閉塞式を貫くのには、 千葉労組の影響力が強固であり、変化を望まないためとも言われている。 |
列車は更に奥地へと走り続けます。 やがて列車は下郡駅へ停車、不思議と興味が沸いたのでぶらり途中下車。 |
下郡駅は小規模な無人駅、一日の平均乗降客数は100人にも満たないようです。 駅の周囲には人の気配も乏しく、もの寂しい雰囲気が漂います。 駅舎とホームは日陰に覆われ、厳しい寒さが身にしみます。 |
体を振るわせながら待ち続けていると、後続の列車が登場。 キハ38 3に乗り換え、更に奥地へと進みます。 |
列車は二つ先の俵田駅に到着、ここで2回目の途中下車。 |
しばらくすると、久留里方面から列車が到着。数人の乗客が降車。 俵田駅の周囲には水田が広がり、一定規模の集落も存在します。 |
次の列車の到着まで、駅周囲を散策してみます。 付近には小規模なロータリー。石碑に多数の文面が刻まれていたものの、 その内容をうかがい知る事は出来ませんでした。 |
遠巻きに線路を眺めていると、次の列車が駅ホームへと接近。 キハ30 100に乗車し久留里方面へ進む予定でしたが、 思うところがあったので、この列車は見過ごしました。 |
収穫を終えた水田に目を移すと、わらを燃やす農民の姿。 焚き火は煙が迷惑とかダイオキシン発生とかで、めっきりと見かけなくなりましたが、 のどかな土地柄?では、特に問題視されないようです。 |
踏切の警報音に引き付けられるように、久留里方面から後続列車が登場。 「思うところ」を満たすため、一旦木更津方面へと戻ります。 |
横田駅にて下車し徒歩で移動、隣駅との中間地点にある小櫃川の鉄橋へ急ぎます。 鉄橋と列車との組み合わせは、列車ファンにはたまらない光景です。 |
鉄橋を渡り終えた列車は、墓地の脇を通過。 祖先の霊に見守られながら、列車は安全運転を勤めます。 |
横田駅の駅舎は、久留里線沿線でも大きめな方。 駅前には小規模な商店街があるものの、大晦日故か 大半の店舗はシャッターを閉じていました。 |
横田駅−東横田駅間は、久留里線では唯一の直線区間。 線路脇からの撮影も容易なので、お奨めの撮影ポイントです。 ・・・あ、農道から撮るので農作業の邪魔にならないように。 |
水田脇の撮影を終えて、東横田駅へと移動。 特徴ある駅舎は、廃車となった貨物車(車掌車との説もある)を転用。 旅気分満点な駅舎ですが、塗装は色あせ錆が随所で目立っています。 |
駅舎の中に足を運ぶと、車内の雰囲気がかすかに残っていました。 無人のホームにひとり腰掛け、列車の到着を待ち続けます。 |
日没も間近となり、長い影が周囲を覆います。 しばらくすると列車が駅ホームに到着、終点に向かい出発します。 |
僅かな夕暮れも過ぎ去り、太陽は内房総の大地に沈みます。 沿線の風景が闇に包まれつつ、列車は終着駅へ向けて走ります。 |
終点の直前になると、沿線の風景はがらりと変化。 列車は山奥へと突入、蛇行する線路を慎重に進みます。 何本ものトンネルを潜り抜け、終点へと近づきます。 |
列車は終点の上総亀山駅に到着。 年の瀬のホームは人影もまばら、一組の親子と思しき乗客の姿のみ。 |
駅ホームを離れ周囲を散策、瞬く間に闇へと飲み込まれます。 夕暮れのスピードに戸惑いつつも、澄み切った空に冴える夕日は格別。 都会では味わえぬ光景に、すっかりと魅了。 |
・・・と、駅方向から強烈な光の帯。 漆黒の大地に向けて、列車が出発の時を迎えました。 |
踏み切りの前を列車が通過、闇空間へと消えてゆきます。 |
上総亀山駅の外観は普通の駅舎、内装はヨーロッパ的な香りが漂います。 無人の駅ホームもありきたりな光景ですが、 白熱灯が放つ柔らかな光が、神秘な空間をかもし出しています。 |
久留里線の旅も、終わりの時が近づきつつあります。 後続列車が無人の駅ホームに到着、 許された時間は出発までの僅かな時となりました。 |
旅を回想する間に、出発時刻が迫ってきました。 駅ホーム末端から内房総の大地に、最後の別れを告げます。 惜しみつつも久留里線の旅が終焉、いつの日かの再訪を夢見つつ・・・。 |